2017年6月22日木曜日

『クレール』くん

『クレール』くん


2013年12月・迷子として収容されましたが、残念ながらお迎えがなく、譲渡のお話もなかったため、TSRでお預かりすることになりました。

収容先の獣医さんの見立てでは、年齢14歳。両眼共白濁し、殆ど見えておらず
外で飼われていたのではないかと思えるほど。
鎧のように毛玉に覆われ、悪臭漂う状態だったそうです。
さて、新しい犬生のスタートに
これからは明るい光に導かれ、幸せになってほしいと願いを込めて
フランス語で明るいという意味のある「クレール」と名付けました。
これが私の4番目の預り犬、クレールとの出会いです。

目の見えない仔のお世話は初めてでしたので、事前に注意点や対処法などを調べ準備しましたが、実際、クレールと生活してみるとハンデを感じさせない、とても手のかからない仔でした。
ゲージの中が安心するようで、そこから周りの様子を伺っていました。
警戒しつつも、吠えることも怯えることもなく、淡々と視覚以外の感覚をフルに使いながら、新しい環境、生活を受け入れていきました。
身体を壁に沿わせながら間取りを確認し、ゲージの出入りも難なくこなし
備え付けの給水機の位置も覚え、喉が渇くとそこでお水を飲み、落ち着きたいときは、ゲージに入る。
またある時は、ソファーの上で寝ていたり、風の気持ち良い日には、窓辺やベランダで日向ぼっこなど。
好きな時に好きなところへ移動し、居心地のいい場所を見つけるのがとっても上手。
それでも柱やドアにゴツンとぶつかってしまうことあります

こちらはヒヤッとしますがクレールは「おっと、いけない、ぶつかっちゃったよ」という感じで
頭をブルブルと左右に振り、何事もなかったかのように、また歩き出します。 
察するに、このように対応できるようになるまでは、それなりの月日と
怖い思いや、痛い目に合い、身をもって体験しながら身に付けた生きるすべ。
それに、クレールの物怖じしない性格によるところも大きいのかもしれません。
目が見えないことを悲しみ嘆くことなく
今の状況を受け入れて前に進む
その適応力、柔軟性、逞しく生き抜く強さに、只々驚かされる事ばかり。

私の方が、どんなに力をもらったか。

さて、大好きな散歩では、グイグイリードを引っ張り、力強くしっかりとした足取りで歩きます。
視覚を補うように匂いや音にはとても敏感。
公園でのことですが、鳥がいると、その気配に反応し、瞬時にハンターモードにスイッチが入り、尻尾をピンと立て、追いかけようと右に左にダッシュしようとします。
まるで見えているごとく敏捷な動き。

また、いつも同じところに来ると
なぜか、植え込みを覗いてチェックを怠りません。
気になって、私も一緒に覗くと猫が飛び出て来て、びっくり!
何事にも興味津々で好奇心旺盛です。
収容所では詳しい健康診断はしないので
保護してからの検査で、隠れていた病気がわかることもしばしばあります。
良かったことは、推定年齢が14歳という見立てから、5歳も若返り9歳に!!
収容先では、シュナじぃと呼ばれ可愛がってもらっていたとか(笑)
血液検査、エコー、尿検査等では
規定値を超えている項目もありましたが
これからフードや生活習慣で、改善できるぐらいのレベル
概ね良好という診断でした。
ところが、ショックだったのは、フィラリアに陽性反応が出たこと。
外飼い疑惑があったので、ある程度は予想していましたが・・・
救いは、現状では心雑音もなく、他の症状も出ていないので
長期戦になる覚悟をしクレールの身体に負担の少ない治療方法を選択
月1回の投薬数を減らすとともに、親虫の成長を妨げながら、寿命(2年とも長い場合8年)が尽きるのを待つ)
クレールが我が家の生活に馴染んでいくように
私も、ちょっと手助けのいることころ、怖がることや注意することを覚え
ごくごく自然にクレールとの生活を楽しむようになりました。



ドライブ中、助手席の私の膝に座り
窓から顔を出すのが好きで
風を感じてとっても気持ち良さそうにしています♪
こんな時、ふっと思うのは
人間でも匂い・臭覚で、ふっと懐かしいと感じたりするこがあるので、クレールも、記憶の中にある景色を思い出していのかなぁ~?
クレールのいる世界ってどんな感じなの?







クレールとの生活が長くなるにつれて、私の中で、ある思いが芽生え始めました。
それは、私がクレールの里親になること。
クレールなら新しいお家へ行っても適応してくれると思う反面
折角、新しい生活環境に慣れたところなのに
また一からのやり直しは、負担になるのでは?
いやいやもっと良いご縁があるかもしれない。
クレールにとって最良の選択とは?という問いに、堂々巡り。
悩んだ末、1年を目途に、それまでにクレールとって良縁が繋がらなければその時は、うちの仔に迎えようと心を決めました。

思えば、保護当時から少なからず、ご縁を感じていたのも事実。

初代シュナ・故ムックは、5歳で白内障を発症し、手術で視力が回復したものの、4年後に緑内障を発症し、点眼薬が手放せない眼圧の上り下がりに一喜一憂する日々。

いずれは視力を失うことの覚悟し、その時は私がムックの目になろう。
でも、残念ながらその機会は与えられず、享年10歳でお空の住人になりました。
クレールとの出会いは、計らずも、その果たせなかった機会を与えてくれるご縁かもしれないと・・・


そして、2015年1月、クレールを家族に迎えました。


今は、穏やかな毎日ですがこの間のことを思い起こすと・・・

皮膚の痒みに悩まされるようになり
フード、お薬、シャンプー療法、何をしても一向に改善するどころか、酷くなり
何か所目かの病院で、やっと原因を特定することができるも
その治療薬は、フィラリア症のクレールには使えないお薬。
一時は、打つ手なしと途方に暮れましたが、先生が製薬会社に症例を確認してくださり、問題例は報告されていないことがわかり
早速、試すと、効果てきめん!!2回の投与で、すっかり完治しました。
このまま原因も特定されず痒みが続いていたら、どうなっていたか考えると、恐ろしいです。
ほっとしたのも束の間
背中のおできが気になって、念のために検査してもらうと
肥満細胞腫との診断結果
またここで、問題になったのは、クレールがフィラリア陽性犬であること。
麻酔に対するリスクが高く、去勢手術も受けていませんでした。
でも、ある程度リスクがあっても切除手術が優先
おできの周りをかなり広範囲に切除され痛々しい状態で帰って来たクレール。
(詳細は、ブログに載せていますので、ご興味があればご覧ください)
今現在、再発もなく、落ち着いています。

さて、ことあるごとに障害になっているフィラリア症
ネットで調べると、「ボルバキア」という最新の治療があり、数か月で陰性転化した実例も。
先生に相談すると、治療経験はないが、そのお薬は、以前からワンちゃんに使われているお薬で、副作用やそれに対する対処法の情報もあるので、決してハイリスクの治療ではないと仰ってくださいました。
この治療を始め、2クール(1クール4か月)で陰性転化!
それでもトータル2年かかりましたが
本当に自分のことのように嬉しいことでした。
一度感染すると、フィラリア成虫が死ぬまで、臓器は蝕まれ続け、進行してゆく厄介な病気です。
でも月に一度のお薬で確実に防げます。
蚊に刺されて感染しても、このお薬が血液に入り込む前に駆除してくれます。
予防薬というより駆虫薬ですね~
色々ありましたが
ここまで二人三脚でどうにか乗り越えてこられたのは、メンバー、ご支援いただきました皆様の励ましや応援
そして親身になって治療に取り組んでくださった獣医師先生のお力があってこそ、今の幸せに繋がっているのだと感じています。


そしてクレールにも新たな出会いがありました。シオンです(写真手前)

初対面の時は、まるで運命の人に出会ってみたいに、匂いを嗅ぎながらくっついて離れず(笑)
どうなることかと思ったほど。相性もバッチリ♪
時にはガイドドッグとして?クレールの相棒となってくれています。

最近
だんだん老いを感じるようになっています。
歩くスピードが遅くなり、散歩に時間がかかります。
寝ている時間も増えたね~
でも、ごはんができる頃に見計らったように、ちゃんと起きて来ます(笑)
食いしん坊なところは変わりません。
そう言えば、ごはんを残したこと一度もないかも。
大好きなおやつをもらうと、取られないようにコソコソ部屋の隅に移動します。
「クレール」と呼ぶと、寝ていてもむくっと起き上がり、声のする方へ、ゆっくりゆっくり確かめるように歩いて来ます。
その何気ない日常の一つ一つが愛おしく、我が家にとってなくてならない存在です。



今は、TSR卒業犬・クレシオコンビとして、イベントにも参加中しています。

自分の家庭に合った犬となら
高齢犬、またはハンデがあっても、家族になれることを、一人でも多くの方に知ってほしいです。
一匹でも多くの仔が幸せになれますように!


クレールに伝え続けたい言葉は「ありがとう」です。
いつまでもこの穏やかな日々が続くことを願って、幸せ報告とします。

クレールは今はTSRメンバーのおうちわんことしてシオンとともに穏やかな生活を送っています。TSRではお預かりしたシュナ達を新しいご家庭に託すまで活動を行っておりますが、新しいおうちがメンバーのおうちということもあります。

ケアを続けていく中で新しいご家庭に託すことを見据えて日々を一緒に生活しており、メンバーがすぐにわが子にという選択をしているわけではありません。悩みに悩み、どこのおうちがいいのか、我が家にいることがベストなのか、また次の子も同じようにとらえてしまったらどうしよう・・・預かり担当はたくさんのことを考え、メンバーに相談し、自分の思いを見極めています。

クレールは視力を失っていましたが、その他の感覚を研ぎ澄まし、問題なく生活を送っています。これからも穏やかな日々が続くことを祈るばかりです。

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